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2011年の活動

演題 「歯科患者学」から考える難症例への対応―特に顎関節症を中心に―」

講師 医療法人社団グリーンデンタルクリニック 島田 淳 理事長
【開催日時】 平成23年12月3日土曜日
【講演時間】 午後6時~午後8時30分
【講演会場】 広島エソール2階

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【講演内容】
歯科治療は主に外科系であり技術的な方面の話題には事欠かないが、医療倫理を含めた患者との関わり、特に患者自体を診るという事については、医科に後れをとっているところであり、歯科と医科の大きな違いと思われる。こうした中で顎関節症は、他の歯科疾患と異なり、内科的な考えを持ち、患者と良好な関係を保ちながら、医療面接、診査、診断そして治療を行うことが、患者予後のために大きな影響を与える。すなわち顎関節症はこれからの歯科医学を考える上で重要な疾患であるといえる。  
演者は、大学卒業後より顎関節症を主に治療を行ってきた。顎関節症は、齲蝕や歯周病のような歯科的疾患とは少し異なる。これは顎関節症が、口腔顔面痛領域、精神医学領域に重なる部分があり、「知らない疾患は診断できない」と言われるように、より多くの知識と幅広い対応が求められているためである。そのためか顎関節症は、まだまだ一般臨床医にとって難しい疾患、わからない疾患として捉えられている。確かに、顎関節症を診断するには、口腔顔面痛領域、精神医学領域の知識が必要であるとともに、医療面接によるカウンセリングのスキルを基にした認知行動療法的対応が必要であったり、理学療法を基にした治療の知識が必要であったりする。しかしこれは顎関節症を勉強することが歯科医として、あるいは人間としての成長に本当に役立つとともに、一般臨床における患者への対応の仕方にも余裕ができ、短い時間でのラポールの形成、精神的な要素を抱えた患者への対応などに大いに役立つことを演者は実感している。
顎関節症は、演者が卒業した20数年前には、あまり実態がわからない疾患であった。全身症状もが顎関節症の症状の一部と言われ、さらに咬み合わせで何でも治るのではと言われていた時代において様々な体験をしてきた。かなりひどい目にもあった。その中で、ここまでは出来る、あるいはここまでやると大変なことになるなど、身を持って体験し、出来ること、できないことを見極めることが最も大事であると考えた。しかし、できないにしても、放り投げるのではなく、どんな状況でも患者に何らかの「オチ」をつけてあげること、すなわち適当と思われるところに紹介してあげられる状況を作っておくこともまた必要である。
以上より演者は、疾患を診ることも大事ではあるが、患者自体を中心に疾患を診て行かないと問題が解決しないことを痛感し、「歯科患者学」という新しい概念が必要であると考えた。
 今回、これまで演者が診てきた患者から得られた経験をもとに、「歯科患者学」の立場から症例を通して、難症例に対する考え方、対応の仕方について話をさせていただきたいと思う。

講師略歴
1987年 日本大学歯学部卒業
1991年 日本大学大学院歯学研究科(補綴学専攻)修了
       学位論文
       顎口腔系の状態と全身状態との関連に関する研究
 ― 水平的下顎位の変化が姿勢,特に重心動揺および抗重力筋に及ぼす影響―
1991年 日本大学歯学部補綴学教室局部床義歯学講座入局
1995年 日本大学助手
1998年 日本補綴歯科学会認定医
1999年 東京歯科大学スポーツ歯学研究室入局 東京歯科大学助手
1999年 東京歯科大学講師
2000年 日本顎関節学会認定医・指導医(~現在)
2004年 日本顎関節学会評議員(~現在)
2005年 医療法人社団グリーンデンタルクリニック理事長(~現在)
東京歯科大学非常勤講師(~現在)日本補綴歯科学会指導医(~現在)
2008年 神奈川歯科大学付属病院 咬み合わせリエゾン診療科非常勤講師(~現在)
2011年 日本補綴歯科学会ガイドライン委員会エキスパートパネル(~現在)
賞 
1993年  日本顎関節学会学術奨励賞受賞
顎口腔系の状態と全身状態との関連に関する研究 
―顎関節症患者における初期治療前後の重心動揺について―
所属学会
日本補綴歯科学会、日本顎関節学会、日本口腔外科学会、日本口腔顔面痛学会、
日本スポーツ歯科医学会、AACMD(アジア顎頭蓋機能学会)
最近の論文
・メンタルな問題を抱えた患者にどこまで対応すべきか
DENTAL DIAMOND 36巻2号 Page111-123,2011.2.
・歯科診療に心身医学・精神医学を利用しよう(共著)
第一回 心身医学・精神医学の基礎知識月刊保団連No.1034,53-57,2015.5.
第2回 心身医学・精神医学の歯科診療への応用法 月刊保団連No.1035,
第3回 症例─こんな患者が来院したら月刊保団連No.1035,49-54,2015.7.
・顎関節症に対するスプリント療法の現在(共著)
 エビデンスとガイドライン  考えられる効果とその仕組み
スプリント療法における問題の所在
 歯界展望114巻1号 Page108-126,2009.7.

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演題 「認知症の口を支える基礎知識」

講師 平野 浩彦 東京都健康長寿医療センター研究所
【開催日時】 平成23年8月20日土曜日
【講演時間】 午後6時~午後8時30分
【講演会場】 広島エソール2階

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講演内容
「認知症」は、2004年に「痴呆」から替わる呼称として世間に紹介され、一般の人々にも予想以上に広く浸透された呼称となっています。
広く浸透した理由の一つに、「痴呆」という呼称のネガティブな印象があったように思います。「痴呆」の「痴」、「呆」は、「痴」は「おろか」、「くるう」という意味であり、「呆」は「ぼんやり」、「魂の抜けた」という意味があります。そこから導かれる文字のイメージは、少なからず軽蔑、蔑視したものでした。
明治5年の「医語類聚」では認知症は「狂ノ一種」と記載されており、明治の末期に、我が国の精神医学の権威であった呉秀三氏が「狂」の文字を嫌い、「痴呆」を提唱し、それが徐々に一般化していった経緯があります。認知症の病態背景は現在と大きな違いは無
いにもかかわらず、その呼称は、その時代の「認知症」の捉え方によって大きく変遷してきたことが推察されます。つまり一連の変遷は、認知症の病態解明とそれに対する周囲の理解とともにあったと言い換えることが出来ます。
「くち」は様々な役割、機能を持つが、健康を維持する栄養面だけでなく、楽しく、美味しく、安全な食事、さらに人とのコミュニケーションに必要な会話や感情表現を演出する役割もあり、特に高齢期において日常生活の中心的な機能として位置付けられています。近年、「くち」を守るケア方法、器具が数多く考案、開発され、要介護高齢者の「くち」を取り巻く環境は改善の方向に向かっています。しかし、認知症の方の「くち」を取り巻く環境に、これらの恩恵が効果的に届いない印象を受けます。
その大きな原因の一つに、口腔のケア提供者の「認知症への理解不足」があるように感じます。
当日は食事支援、口腔ケアなどを通して、認知症について会場の皆様と考えていきたいと思います。

講師略歴
東京都健康長寿医療センター研究所 専門副部長
平 野 浩 彦(ひらの ひろひこ)
日本大学松戸歯学部卒業 医学博士
平成2年 東京都老人医療センター 歯科口腔外科研修医
平成3年 国立第二病院 口腔外科 研修医
平成4年 東京都老人医療センター 歯科口腔外科主事、
平成14年 同センター医長
平成21年 東京都健康長寿医療センター研究所 専門副部長
(東京都老人医療センター・東京都老人総合研究所の組織編成により東京都健康長寿医療センターへ名称変更)
日本老年学会 理事
日本応用老年学会 理事
日本老年歯科医学会 常任理事・専門医・指導医
国立長寿医療研究センター非常勤研究員
日本大学松戸歯学部 非常勤講師
九州歯科大学 非常勤講師
厚生労働省・口腔機能の向上プログラムマニュアル作成研究班、
厚生労働省・生活機能評価に関するマニュアル作成研究班
日本歯科医師会在宅歯科医療推進チーム
日本歯科医師会地域保健委員会
東京都歯科医師会高齢者保健医療常任委員会
東京都歯科保健対策推進協議会
東京都介護予防推進会議・口腔ケアプログラム開発・普及検討委員会
滝野川歯科医師会口腔保健センター運営員会
文京区地域医療連携推進協議会
文京区障害者歯科検討部会(部会長)
などに参加

主な著書
「ビジュアル老人看護百科サルース」(共著)
「高齢者を知る時点」(共著 厚生科学研究所)
「治療後患者からクレームが出たとき100問100答」(共著 デンタルダイアモンド社)
「続介護予防完全マニュアル」(共著 東京都高齢者研究・福祉振興財団)
「実践!介護予防口腔機能向上マニュアル」(監修 東京都高齢者研究・福祉振興財団)
「実践!認知症を支える口腔のケア」(監修・共著 東京都高齢者研究・福祉振興財団)
「認知症ライフパートナー検定試験応用テキスト」
(共著 日本認知症コミュニケーション協議会)

賞罰
平成14年 日本老年学会 優秀ポスター賞
平成16年 村上元孝記念研究奨励賞 最優秀論文賞
平成18年 東京都知事表彰
平成21、22年 日本認知症ケア学会 石崎賞
平成23年 日本老年学会 優秀ポスター賞(共演)
平成23年 日本老年歯科医学会 優秀口演発表(共演)
○興味のあるテーマ
身体加齢変化と口腔機能の関連:地域における効率的な歯科医療提供体制の立
認知症の方への食支援の提案

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演題 「世界から学ぶ、歯科の方向性。日本の歯科医療の進むべき道は?」

講師 中井大介先生 ナカイデンタルオフィス医院長
【開催日時】 平成23年5月21日土曜日
【講演時間】 午5時~午後7時30分
【講演会場】 広島エソール2階

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講演内容 

今日の世界は、ますますボーダレスな社会になってきています。最近の世界情勢としましては、チュニジアやエジプトやリビアの政治の激変が伝えられていますが、世界はインターネットで繋がれ、それによって世界の政治・経済・人々の生活は全てがリンクされていく状況にあります。医療の現場においても、現在では同様の状況に有ると言えます。今や、医療サービスもグローバルスタンダードが求められており、良質な医療を求める人々は、世界中の医療施設に注意を払っています。近年、医療ツーリズムという言葉が生まれ、日本政府が、治療を日本国内で受けようとする外国人に対して6ヶ月のビザを発給するシステムを構築した事からも分るように、医療の市場は国内のみならず、海外からの顧客を獲得していく時代に変化しており、我々歯科医師も、その対応が求められているのです。今回の講演では、そのような世界の医療事情を踏まえ、私が主に韓国や中国の歯科医療現場を視察して、学び、現在私の診療所で実践している医療サービスの手法(主にカウンセリングシステム)について、お話しさせていただき、皆様の今後の診療の一助になればと考えている次第です。

講師略歴
1990年 京都府立北稜高校卒業後、東京・大阪でスポーツクラブに勤務
その後、3年間のマーケティングリサーチ会社勤務。
1997年 朝日大学歯学部に入学。
2004年 同大学卒業
      大阪府堺市 医療法人 佑絢会 勤務
      大阪府泉南市 かめもと歯科医院にて訪問診療に従事
2005年 岸和田市 杉本歯科医院 代理院長として勤務
2006年 韓国Ye歯科に短期留学
2007年 大阪府岸和田市にて、ナカイデンタルオフィス開業
http://www.nakai-dental.net/index.html
2008年 香港に会社(ブルー メディカル ウイング)設立
      上海、北京等で講演多数
2009年 韓国Ye歯科ソウルチョンダムドン本院にて講演

そして、実践事例を通じて、”あすなろ会”の会員の皆様と共に 【歯科医院経営】について考えたいと思います。

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演題 「歯科医院経営を考える」

講師 なかむら歯科クリニック 院長 中村 幸生 様
    なかむら歯科クリニック チーフ 猪岡 由香理 様
【開催日時】 平成23年2月5日土曜日
【講演時間】 午後5時~午後7時30分
【講演会場】 広島エソール2階

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講演内容 院長 中村 幸生様
“あすなろ会”会員の中村幸生です。当院は開院して1年9ヶ月のクリニックです。夢と希望に胸を膨らませ、平成21年4月に福山市にてオープンしました。ところが、いざ蓋を開けて見ると、現実は厳しい状況でした。一日来院患者数が数名。不安と焦りの毎日。開業に伴う借金返済への不安。勤務医時代の考え方から抜け出すことのできない新米院長の迷走。このような状況でした。開業時の私の歯科医院経営知識は、とても浅はかなものでした。そこで、歯科医院経営という観点に着目し、昨年1年間で、10件の歯科医院見学・見学受け入れを行いました。自医院より外部に目を向け、様々な取り組みをされている医院様をスタッフと共に見ることにより、当院でも取り組みを摸倣・改良して実践してまいりました。
数多くの実践事例の中で成功したものもあれば、失敗したものもあります。その中で、”あすなろ会”の会員として、日頃お世話になっております会員の皆様に恩返しの気持ちを込めて、経営者の仕事とは何か?という考えを踏まえた上で、成功した約60症例の実践事例をお伝えしたいと考えています。
実践事例を行っていく上で、当院は成長を続けています。
ベテランの先生方には、こんな新しい取り組みをあるんだなぁ~と、温かい気持ちで聞いて頂き、また、これから開業を考えられておられる若い勤務医の先生方には、自分と同じ失敗を繰り返さない為にも、是非とも参考にして頂きたいと思います。
そして、実践事例を通じて、”あすなろ会”の会員の皆様と共に 【歯科医院経営】について考えたいと思います。

院長 中村 幸生様のご略歴
:平成13年3月 神奈川歯科大学卒業:平成13年4月 三浦歯科医院勤務
:平成14年4月 山田歯科医院勤務 :平成18年4月 中村歯科医院勤務
:平成20年4月 鴨方歯科クリニック勤務
:平成21年4月 なかむら歯科クリニック開業

講演内容  チーフ 猪岡 由香理 様
開業してまだ2年の新米クリニック。現在から未来を個々が描く事の出来るスタッフ5名。そしてそのチームを引っ張る院長。なぜここまで出来るのか?なぜ働き続けたいのか?なぜスタッフが輝いているのか?スタッフ目線からお話します。
チーフ 猪岡由香理 の略歴
?平成12年3月  金蘭短期大学英文科卒業
?平成12年4月  某歯科医院 受付担当 勤務
?平成14年4月  某歯科医院 受付担当 勤務
?平成21年3月  なかむら歯科クリニック 受付担当 勤務

猪岡 由香理 様のご略歴
1990年 日本歯科大学歯学部卒業
1994年 日本歯科大学大学院(口腔外科学)修了
2000年 日本歯科大学歯学部口腔外科学教室第1講座 講師
2008年 日本歯科大学附属病院歯科麻酔・全身管理科 准教授
    インプラント診療センター併任(~現在)
    ハイリスク診療センター併任(~現在)
    顎関節症診療センター併任(~2007年)

(社)日本口腔外科学会 専門医
日本顎顔面インプラント学会 評議員,指導医
日本有病者歯科医療学会 評議員,指導医
World Congress of Oral Implantology 評議員
Journal of Oral Science 査読委員
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